「いえ、必要ありません!」
一体何を怒っているのだろう。敵意のようなものを向けられて困惑した。自分としては、その原因がなんなのか皆目見当もつかない。
古代進は、背筋をピンと伸ばした彼女の後姿を見て思った。<古代は森君のエスコート>と命じられ、すぐにその意味がわからず、
「それはどういう?」などと鈍い反応を見せたが為に、彼女の怒りを倍増させてしまったのかもしれないが。
結局、「護衛は古代に任せる」との沖田の強い一言で、命令は覆えることなくメディックの護衛としてシーガルに乗り込むこととなったのだった。
憮然たる面持の古代が先に行き、ピリピリした雰囲気の森は少し離れて続いた。同行するアナライザーと原田真琴は、意気揚々とシーガルに乗り込んだ。
ただ真琴は、不穏な空気の二人に気づき、心中で(これは面白いものが見られるかもしれない)と好奇心を膨らませながら。
「発艦準備、よし」
隣の席の彼女は、まともにこちらを見ずに「救難活動はこちらの指示に従ってもらいます」とぴしゃりと言い放った。
任務なのだから当然従うまで。異論を唱えるわけがない。なのにこの船務長ときたら、どうしてこうも自分を目の敵にするのか。
「女の子とロボットだけだなんて、無理だろ」
聞こえてないだろう、ボソっと零した愚痴に、彼女は猛烈な勢いで噛みついてきた。
「ご心配なく。あなたの手は煩わせません!!」
(あーいえば、こーいう。なんでこうなるのかねえ)
「ワタシハユウシュウ。マカセテアンシン」
アナライザーの発言はどちらのフォローにもなっておらず、どうにも噛みあわない
シーガルの船内で、古代は小さく息を吐く。
「そりゃ、どーも」
少なくとも自分はけんかしているつもりはない。今まで彼女と関わったのは、2回ほど。初対面では多少、失礼を働いてしまったかもしれないが
それを今日までずっと引きずってるってのはいかがなものかと、古代は面白くない。
古代の中では、2回目に会ったときの自己紹介と握手は、笑顔で終わっていたはず、という記憶となっている。
たぶん、『ああ、よろしく』とかなんとか言って終えたのではなかったか。
握手はしたかどうか定かではない。あの時は艦長に物申すの気持ちが急いて、よく覚えていないのだった。
森は、ほかのクルーに対しては愛想がいい。
勤務外では、よく笑うし、よく話している。古代が島と食堂にいた時だってそうだ。島には話しかけて、笑っていた。
古代とは目も合わせなかったが。
それがたまたまそうだったのか、わざとだったのかは古代はよくわからなかった。それとなく島に、自分は彼女怒らせるようなことしたかと訊いてみたが
『相変わらず鈍感だな、おまえ』と呆れられ、言葉に詰まってしまった。
自分が彼女に抱いた第一印象は、決して悪いものではなかった。ぼんやりとしたものだったが。
彼女の存在は、ともすれば暗くなりがちな自分を、自分の気持ちを、引き上げてくれるかもしれない―そんな予感があった。
ヤマトが地球を発進した際の、高揚感のようなものと同じだと。
―火星で見た異星のひと。
予感めいたもの。
頭の片隅に追いやっていたものを捉えかけて、しかし、古代の思考は停止した。
「……誰がこの信号を送っているのかしら?」
その声に、ちらりと横を見やる。
落ち着いた声の彼女は、先程までのツンケンした森雪からヤマトの森船務長の顔になっていた。
明るい色の髪。
伏せると目立つ長い睫毛。
古代は、憂いを含んだ彼女の横顔から目が離せなくなる。
(やっぱり似てるよな)
そして、問わずにいられなくなる。
「変なこと、訊いていいかな?」
「……いいけど」
戸惑いを見せながらも、彼女はそう応じてくれた。
「君、宇宙人に親戚とかいる?」
「はいいいいいいいっ???」
なんとも情けないような彼女の呆れ顔に、古代は咄嗟に「いや、いい。忘れて」としか言えなかった。
ひょっとして、また怒らせてしまったか。
彼女の反撃に備えて少し身構えながら操縦かんを握る。しかし、彼女はそれ以上何も追及してこなくなった。
あまりにも突拍子もない話で、あきれ果ててしまったのかもしれない。
「マモナクハッシンチテン。トウチャクマデ5フンデス」
妙な空気が流れ始めたシーガル機内に、アナライザーの金属的な声音が響いた。
機内の誰もが、その声にほっとしたに違いない。古代もいつもの冷静な戦術長モードに切り替える。
着陸態勢に入ると告げ、機体を降下させ始めた。
一体何を怒っているのだろう。敵意のようなものを向けられて困惑した。自分としては、その原因がなんなのか皆目見当もつかない。
古代進は、背筋をピンと伸ばした彼女の後姿を見て思った。<古代は森君のエスコート>と命じられ、すぐにその意味がわからず、
「それはどういう?」などと鈍い反応を見せたが為に、彼女の怒りを倍増させてしまったのかもしれないが。
結局、「護衛は古代に任せる」との沖田の強い一言で、命令は覆えることなくメディックの護衛としてシーガルに乗り込むこととなったのだった。
憮然たる面持の古代が先に行き、ピリピリした雰囲気の森は少し離れて続いた。同行するアナライザーと原田真琴は、意気揚々とシーガルに乗り込んだ。
ただ真琴は、不穏な空気の二人に気づき、心中で(これは面白いものが見られるかもしれない)と好奇心を膨らませながら。
「発艦準備、よし」
隣の席の彼女は、まともにこちらを見ずに「救難活動はこちらの指示に従ってもらいます」とぴしゃりと言い放った。
任務なのだから当然従うまで。異論を唱えるわけがない。なのにこの船務長ときたら、どうしてこうも自分を目の敵にするのか。
「女の子とロボットだけだなんて、無理だろ」
聞こえてないだろう、ボソっと零した愚痴に、彼女は猛烈な勢いで噛みついてきた。
「ご心配なく。あなたの手は煩わせません!!」
(あーいえば、こーいう。なんでこうなるのかねえ)
「ワタシハユウシュウ。マカセテアンシン」
アナライザーの発言はどちらのフォローにもなっておらず、どうにも噛みあわない
シーガルの船内で、古代は小さく息を吐く。
「そりゃ、どーも」
少なくとも自分はけんかしているつもりはない。今まで彼女と関わったのは、2回ほど。初対面では多少、失礼を働いてしまったかもしれないが
それを今日までずっと引きずってるってのはいかがなものかと、古代は面白くない。
古代の中では、2回目に会ったときの自己紹介と握手は、笑顔で終わっていたはず、という記憶となっている。
たぶん、『ああ、よろしく』とかなんとか言って終えたのではなかったか。
握手はしたかどうか定かではない。あの時は艦長に物申すの気持ちが急いて、よく覚えていないのだった。
森は、ほかのクルーに対しては愛想がいい。
勤務外では、よく笑うし、よく話している。古代が島と食堂にいた時だってそうだ。島には話しかけて、笑っていた。
古代とは目も合わせなかったが。
それがたまたまそうだったのか、わざとだったのかは古代はよくわからなかった。それとなく島に、自分は彼女怒らせるようなことしたかと訊いてみたが
『相変わらず鈍感だな、おまえ』と呆れられ、言葉に詰まってしまった。
自分が彼女に抱いた第一印象は、決して悪いものではなかった。ぼんやりとしたものだったが。
彼女の存在は、ともすれば暗くなりがちな自分を、自分の気持ちを、引き上げてくれるかもしれない―そんな予感があった。
ヤマトが地球を発進した際の、高揚感のようなものと同じだと。
―火星で見た異星のひと。
予感めいたもの。
頭の片隅に追いやっていたものを捉えかけて、しかし、古代の思考は停止した。
「……誰がこの信号を送っているのかしら?」
その声に、ちらりと横を見やる。
落ち着いた声の彼女は、先程までのツンケンした森雪からヤマトの森船務長の顔になっていた。
明るい色の髪。
伏せると目立つ長い睫毛。
古代は、憂いを含んだ彼女の横顔から目が離せなくなる。
(やっぱり似てるよな)
そして、問わずにいられなくなる。
「変なこと、訊いていいかな?」
「……いいけど」
戸惑いを見せながらも、彼女はそう応じてくれた。
「君、宇宙人に親戚とかいる?」
「はいいいいいいいっ???」
なんとも情けないような彼女の呆れ顔に、古代は咄嗟に「いや、いい。忘れて」としか言えなかった。
ひょっとして、また怒らせてしまったか。
彼女の反撃に備えて少し身構えながら操縦かんを握る。しかし、彼女はそれ以上何も追及してこなくなった。
あまりにも突拍子もない話で、あきれ果ててしまったのかもしれない。
「マモナクハッシンチテン。トウチャクマデ5フンデス」
妙な空気が流れ始めたシーガル機内に、アナライザーの金属的な声音が響いた。
機内の誰もが、その声にほっとしたに違いない。古代もいつもの冷静な戦術長モードに切り替える。
着陸態勢に入ると告げ、機体を降下させ始めた。
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プロフィール

管理人 ひがしのひとみ
ヤマト2199に30数年ぶりにド嵌りしました。ほとんど古代くんと雪のSSです
こちらは宇宙戦艦ヤマト2199のファンサイトです。関係各社さまとは一切関係ございません。扱っているものはすべて個人の妄想による二次作品です。この意味がご理解いただける方のみ、お楽しみください。
また当サイトにある作品は、頂いたものも含めてすべて持ち出し禁止です。
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