「はい?」
彼は怒ったような、不貞腐れたような眼差しを私に向けて、尚もそれを咥えろと言う。
「なんでそんなことやってるの?」
スカーフを外して、制服のジャケットを脱ぎ、椅子に掛けた。夕飯はどうするのかと聞く前に
いきなりお菓子を差し出すなんて、と私は子どもっぽい彼のそれを、気遣いだとは思わなかったのだ。
それに、普段私に対して甘えることの少ない彼が、渋々やってるのだ、という態度なのが
はっきり言って面白くなかった。
彼は咥えていたお菓子を、そのままもぐもぐと咀嚼してしまった。
「もう、いいよ」
今日は、彼は休み。私はここのところ残業続きで、今夜もかなり遅い帰宅時間となってしまった。
古代君と同棲生活を始めて3か月目、まだお互いに遠慮がある。踏み込めない距離、踏み込ませない壁のようなものを
感じる時があって、疲れはじめていたのかもしれない。
古代君が何をしたかったのか特に気に留めることもなく、私は「お風呂入ってくる」と言い残して居間を出た。
さっとシャワーを浴びて出てくる頃には、テーブルの上に温かなシチューやサラダが並べられていた。
私は別段気にすることなく「ありがとう。いただきます」と言って食卓に着いた。
「古代君は、先に食べたのね? 後片付けは自分でやるから、いいよ。先に休んでて」
これは私なりの、彼への気遣いのつもりだった。
なのに、かれはパジャマ姿で向かいの席に座って、水を飲んでいた。
手に、さっきのお菓子の箱を持ったまま。
「どうしたの?お腹空いてるの? 一緒にシチュー食べる?」
自分が疲れていた為に、彼への接し方がおざなりになっていたのかもしれない、そんな気がしたから
なるべく笑みを浮かべて彼に訊いてみた。すると。
「仕事お疲れさん。疲れてるのわかってるけど、今の雪の顔、鏡で見て来いよ。
眉間のしわ、朝からずっと入ったままだ」
あ、気にしていたことを。そうよここのところ忙しすぎて、怒りっぽくなってるのは自覚してる。
私が反論しようと口を開きかけると。
古代君はすかさず、さっきのお菓子――ポッキーを私の口にねじ込んだのだ。
「?????」
「何のつもり?」
ポッキーを咥えたまま私は抗議する。
「他愛のないゲーム」
彼はそれだけ言って、私の肩を抱いた。そして私の咥えてるポッキーを、自分も咥えてぽりぽりと食べ始めたのだった。
一体何のゲームなのかわからなかったけど、咥えっぱなしで何もしないのは、ゲームの負けのような気がして、
私も猛烈な勢いでそれを食べ始めた。
十秒も経たないうちにポッキーは、私と古代君に食べつくされて無くなってしまった。
「僕の勝ち」
まだもぐもぐしている私に、彼はそのままキスをした。
2013 1111 hitomi higasino
彼は怒ったような、不貞腐れたような眼差しを私に向けて、尚もそれを咥えろと言う。
「なんでそんなことやってるの?」
スカーフを外して、制服のジャケットを脱ぎ、椅子に掛けた。夕飯はどうするのかと聞く前に
いきなりお菓子を差し出すなんて、と私は子どもっぽい彼のそれを、気遣いだとは思わなかったのだ。
それに、普段私に対して甘えることの少ない彼が、渋々やってるのだ、という態度なのが
はっきり言って面白くなかった。
彼は咥えていたお菓子を、そのままもぐもぐと咀嚼してしまった。
「もう、いいよ」
今日は、彼は休み。私はここのところ残業続きで、今夜もかなり遅い帰宅時間となってしまった。
古代君と同棲生活を始めて3か月目、まだお互いに遠慮がある。踏み込めない距離、踏み込ませない壁のようなものを
感じる時があって、疲れはじめていたのかもしれない。
古代君が何をしたかったのか特に気に留めることもなく、私は「お風呂入ってくる」と言い残して居間を出た。
さっとシャワーを浴びて出てくる頃には、テーブルの上に温かなシチューやサラダが並べられていた。
私は別段気にすることなく「ありがとう。いただきます」と言って食卓に着いた。
「古代君は、先に食べたのね? 後片付けは自分でやるから、いいよ。先に休んでて」
これは私なりの、彼への気遣いのつもりだった。
なのに、かれはパジャマ姿で向かいの席に座って、水を飲んでいた。
手に、さっきのお菓子の箱を持ったまま。
「どうしたの?お腹空いてるの? 一緒にシチュー食べる?」
自分が疲れていた為に、彼への接し方がおざなりになっていたのかもしれない、そんな気がしたから
なるべく笑みを浮かべて彼に訊いてみた。すると。
「仕事お疲れさん。疲れてるのわかってるけど、今の雪の顔、鏡で見て来いよ。
眉間のしわ、朝からずっと入ったままだ」
あ、気にしていたことを。そうよここのところ忙しすぎて、怒りっぽくなってるのは自覚してる。
私が反論しようと口を開きかけると。
古代君はすかさず、さっきのお菓子――ポッキーを私の口にねじ込んだのだ。
「?????」
「何のつもり?」
ポッキーを咥えたまま私は抗議する。
「他愛のないゲーム」
彼はそれだけ言って、私の肩を抱いた。そして私の咥えてるポッキーを、自分も咥えてぽりぽりと食べ始めたのだった。
一体何のゲームなのかわからなかったけど、咥えっぱなしで何もしないのは、ゲームの負けのような気がして、
私も猛烈な勢いでそれを食べ始めた。
十秒も経たないうちにポッキーは、私と古代君に食べつくされて無くなってしまった。
「僕の勝ち」
まだもぐもぐしている私に、彼はそのままキスをした。
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プロフィール

管理人 ひがしのひとみ
ヤマト2199に30数年ぶりにド嵌りしました。ほとんど古代くんと雪のSSです
こちらは宇宙戦艦ヤマト2199のファンサイトです。関係各社さまとは一切関係ございません。扱っているものはすべて個人の妄想による二次作品です。この意味がご理解いただける方のみ、お楽しみください。
また当サイトにある作品は、頂いたものも含めてすべて持ち出し禁止です。
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