「小さな花」 どらどら



「わぁ~。かわいい。これ何の花?」

雪がタブレットを見ながら話す。

地球への帰り、雪は俺の部屋に来る事が多くなった。

彼女の後ろから覗き込むと、小さな花が映っている。

「これはサボテンや多肉植物の花。」

俺は懐かしい気持ちになった。

「そうなの?良く知ってるのね。でも、サボテンや多肉植物ってなに?」

雪がワクワクした目で俺の答えを待っている。

「これは乾燥地帯に生きる植物。水が少ない所でも大丈夫。
棘がある物や葉っぱみたいな物がたくさんある物、丸形や柱形に珍しいのはハート形もある。
体に水分を溜めるんだ。中には花を咲かせる物もあるよ。」

タブレットを操作し、色々な種類を出す。

「本当だぁ~。ハートもある。花もピンクに黄色。色々あるのね。」
雪は楽しそうに見ている。

「ねぇ。古代君は育てた事あるの?」
じっと俺を見る。

「いいや。でも祖母の家の近所に同じ年頃の子がいて、行った時一緒に遊んでた。
その子のお姉ちゃんが育ててたから覚えてる。」

懐かしそうに俺は答える。

「古代君の思い出の花なんだ…。」
つぶやく雪。

「あっ。ごめん。」
記憶がない雪には思い出話はきつかったかなと謝る。

「ううん。違うの。この花の思い出が楽しくて良かったと思って。その子達、今どうしてるのかな?」

「えっ!」
会った事のない、俺の思い出の中の子達の心配をするの?
やっぱり君は素敵だ。

思わず後ろから抱きしめた。

「わからない。元気ならいいけど。」

「元気ならいつか会えるわよ。私達も頑張って地球に帰りましょう。」
俺を振返り「ねっ!」と微笑む。

参ったな。
目が離せないよ。

雪の頬を両手で包み
「この小さな花は、厳しい環境でも強く生きる。そして力いっぱい鮮やかな花を咲かせる。そう、雪みたいだ。だから…。」

大好きだよ…。

と、唇にそっとキスをする。

「ありがとう。古代君。」

私も大好き…。

雪が俺を強く抱きしめる。


地球に帰ったらこの小さな花を一緒に育てよう。

うん。ずっと。ずっと一緒にね。



お題 どらどら
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