26話
「たったひとつの約束」
「……古代?」
「ん?どうかしたか、島?」
やや遅れて親友の問いかけに反応する古代。
「北野が交代だって、さっきからおまえに何度も」
「悪い。北野、交代だったな」
後ろをみると、北野が気まずそうに頭を掻いていた。
「古代、大丈夫か?」
「ああ。ただの寝不足」
古代は、よろよろと立ち上がり、北野の肩をぽんぽんと叩いた。
「じゃ、あとはよろしく」
島はまだ何か言いたそうに見ている。他のクルーたちの視線も感じる。
だが、古代は敢えて気づかぬ振りをして艦橋を後にした。
笑い声で満たされる艦内。クルーたちの表情は明るい。
浮足立っているのも仕方がないだろう。
地球帰還まであとわずかなのだから。
無事にヤマトを地球に。
戦術長としての責任感だけで、立っていられる。
自室に戻る気にもならなくて、古代は一人展望室に向かう。
ひっそりとそこに立つと、すぐ横に彼女の気配を感じた。
今の自分を見たならば、きっと叱咤激励するのだろう。
古代は目を閉じて、思い出していた。
ただひとつの約束を。
『一緒に地球へ帰ろう』と交わしていたことを。
天も地もない真っ暗な宇宙空間を進むのを、果てしないと感じていた頃
彼女は、ぽつりと漏らしたのだ。
『すこしづつ景色が変わってるよね』
はっとして横に立つ彼女を見ると、『肩に力が入り過ぎてるのよ、古代君は』と笑っていた。
『必ず生きて帰ろう、一緒に』
約束の証に右手を差し出すと、彼女は一度その手をパチンと弾いてから
「ええ、もちろん!」と力強く頷き、握り返したのだった。
今一度、展望室から見上げる空間に、笑う彼女の姿が浮かび上がる。
まだ何も。
何も始まっていなかったのに。
「地球だ!地球が見えてきたぞ!!!」
湧きあがる歓声も、耳の奥で反響するだけだった。
歓喜する乗組員たちが、続々と通路に飛び出してくる。
古代は一人流れに逆らって、歩き出した。
地球に戻れば、何を思えばいいのだろう。
彼女が教えてくれるのか。
誰にも告げなかった想いを、静かに終わらせるなら今しかない。
一歩を踏み出すのさえ重い足取り。
古代は、辛くなるだけだからと遠ざかっていた自動航法室へと足を向けた。
「たったひとつの約束」
「……古代?」
「ん?どうかしたか、島?」
やや遅れて親友の問いかけに反応する古代。
「北野が交代だって、さっきからおまえに何度も」
「悪い。北野、交代だったな」
後ろをみると、北野が気まずそうに頭を掻いていた。
「古代、大丈夫か?」
「ああ。ただの寝不足」
古代は、よろよろと立ち上がり、北野の肩をぽんぽんと叩いた。
「じゃ、あとはよろしく」
島はまだ何か言いたそうに見ている。他のクルーたちの視線も感じる。
だが、古代は敢えて気づかぬ振りをして艦橋を後にした。
笑い声で満たされる艦内。クルーたちの表情は明るい。
浮足立っているのも仕方がないだろう。
地球帰還まであとわずかなのだから。
無事にヤマトを地球に。
戦術長としての責任感だけで、立っていられる。
自室に戻る気にもならなくて、古代は一人展望室に向かう。
ひっそりとそこに立つと、すぐ横に彼女の気配を感じた。
今の自分を見たならば、きっと叱咤激励するのだろう。
古代は目を閉じて、思い出していた。
ただひとつの約束を。
『一緒に地球へ帰ろう』と交わしていたことを。
天も地もない真っ暗な宇宙空間を進むのを、果てしないと感じていた頃
彼女は、ぽつりと漏らしたのだ。
『すこしづつ景色が変わってるよね』
はっとして横に立つ彼女を見ると、『肩に力が入り過ぎてるのよ、古代君は』と笑っていた。
『必ず生きて帰ろう、一緒に』
約束の証に右手を差し出すと、彼女は一度その手をパチンと弾いてから
「ええ、もちろん!」と力強く頷き、握り返したのだった。
今一度、展望室から見上げる空間に、笑う彼女の姿が浮かび上がる。
まだ何も。
何も始まっていなかったのに。
「地球だ!地球が見えてきたぞ!!!」
湧きあがる歓声も、耳の奥で反響するだけだった。
歓喜する乗組員たちが、続々と通路に飛び出してくる。
古代は一人流れに逆らって、歩き出した。
地球に戻れば、何を思えばいいのだろう。
彼女が教えてくれるのか。
誰にも告げなかった想いを、静かに終わらせるなら今しかない。
一歩を踏み出すのさえ重い足取り。
古代は、辛くなるだけだからと遠ざかっていた自動航法室へと足を向けた。
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プロフィール

管理人 ひがしのひとみ
ヤマト2199に30数年ぶりにド嵌りしました。ほとんど古代くんと雪のSSです
こちらは宇宙戦艦ヤマト2199のファンサイトです。関係各社さまとは一切関係ございません。扱っているものはすべて個人の妄想による二次作品です。この意味がご理解いただける方のみ、お楽しみください。
また当サイトにある作品は、頂いたものも含めてすべて持ち出し禁止です。
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