目の前の女は眠り続けている。
その傍らで、弟があぐらをかいて座り込んでいる。
俺が出向前に渡したハーモニカをポケットから取り出して、
眠り続ける彼女に一曲聴かせてやっていた。
吹き終わると、一言二言女に声をかけて、重い足取りで戻っていく。
進は同じ時刻になると、これを毎日ルーティーンのように繰り返した。
「眠れる艦の美女だな」
魂だけになった俺がつぶやいても女の耳に届かない。
美女か。
そうだな。たぶん綺麗な子だ。
生気が薄いとは言っても、透き通るような肌の白さ、
閉じた目を縁取るような睫毛の長さ。物言いたげな形のいい唇。
その目が閉じられていて再び開くことはなかったとしても、彼女は美しい女なのだろう。
残酷なようだが、その目が開かれることは、きっと永遠にこない。
生前、自分が関わりを持った女は、生命力に
満ちていた。
夢と希望に溢れていた。
薫もそうであったし、孤高のイスカンダルの女王にしてもそうだ。
結果として。
命をかけて落とした自分には、ないものを彼女たちは持っていたということなのか。
そうだとしたら、目の前のこの女はどうなのだ。
波長が合いそうだと、予感した。
同じニオイを感じ取った。
イスカンダルの女王と最後に交わした約束を思い出した。
この地に独りで立つ女王の、凛とした後姿が寂しそうだと感じたこともあった。
けれど彼女や、薫は生きている。生き抜く力を持っている。
約束を破る結果になるかもしれない。
けれど、この命を懸けて地球が救えるとしたなら。
もう一つ、わがままな個人の願いを叶えさせてくれ。
呼吸を維持させられている装置に繋がれている間も、
生命のニオイが少しずつ漏れていき、近いうちに途絶えてしまうことは、はっきりわかった。
進は、わずかな希望にすがって、ルーティーンを繰り返す。
俺が、してやれることは何だ?
迷っている暇はない。
彼女の生命は、風前の灯火。
最後の言葉は、俺の願いだ。
どうか、生き抜いてくれ。
2014 0703 hitomi higasino
その傍らで、弟があぐらをかいて座り込んでいる。
俺が出向前に渡したハーモニカをポケットから取り出して、
眠り続ける彼女に一曲聴かせてやっていた。
吹き終わると、一言二言女に声をかけて、重い足取りで戻っていく。
進は同じ時刻になると、これを毎日ルーティーンのように繰り返した。
「眠れる艦の美女だな」
魂だけになった俺がつぶやいても女の耳に届かない。
美女か。
そうだな。たぶん綺麗な子だ。
生気が薄いとは言っても、透き通るような肌の白さ、
閉じた目を縁取るような睫毛の長さ。物言いたげな形のいい唇。
その目が閉じられていて再び開くことはなかったとしても、彼女は美しい女なのだろう。
残酷なようだが、その目が開かれることは、きっと永遠にこない。
生前、自分が関わりを持った女は、生命力に
満ちていた。
夢と希望に溢れていた。
薫もそうであったし、孤高のイスカンダルの女王にしてもそうだ。
結果として。
命をかけて落とした自分には、ないものを彼女たちは持っていたということなのか。
そうだとしたら、目の前のこの女はどうなのだ。
波長が合いそうだと、予感した。
同じニオイを感じ取った。
イスカンダルの女王と最後に交わした約束を思い出した。
この地に独りで立つ女王の、凛とした後姿が寂しそうだと感じたこともあった。
けれど彼女や、薫は生きている。生き抜く力を持っている。
約束を破る結果になるかもしれない。
けれど、この命を懸けて地球が救えるとしたなら。
もう一つ、わがままな個人の願いを叶えさせてくれ。
呼吸を維持させられている装置に繋がれている間も、
生命のニオイが少しずつ漏れていき、近いうちに途絶えてしまうことは、はっきりわかった。
進は、わずかな希望にすがって、ルーティーンを繰り返す。
俺が、してやれることは何だ?
迷っている暇はない。
彼女の生命は、風前の灯火。
最後の言葉は、俺の願いだ。
どうか、生き抜いてくれ。
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プロフィール

管理人 ひがしのひとみ
ヤマト2199に30数年ぶりにド嵌りしました。ほとんど古代くんと雪のSSです
こちらは宇宙戦艦ヤマト2199のファンサイトです。関係各社さまとは一切関係ございません。扱っているものはすべて個人の妄想による二次作品です。この意味がご理解いただける方のみ、お楽しみください。
また当サイトにある作品は、頂いたものも含めてすべて持ち出し禁止です。
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