「原田衛生士、意見具申♪<<恋のレンタルーム>>」
帰路のヤマト艦内は比較的平和です。戦闘もないし。
無事にイスカンダルからコスモリバースシステムも受け取って、あとは地球へと急ぐだけ。
でもね。平和すぎると今までどうってことなかったような事柄が、気になってしまうというか。
自分の事だけならともかく、多方面の方々から同じような悩みを聞いてしまった。
医務室で、彼ら(彼女ら)から聞いていた他愛ない愚痴――は、突如怒りの矛先を、
別の方向へと向けてしまい、話を訊く私まで考えさせられてしまった。
彼ら(彼女ら)いわく、上級士官には、個室が与えれていて、そうでない者は相部屋を割り当てられている。
それは、まあそういうもんだと割り切ってるし、文句はない。
だけど!
自分とその恋人が、この艦内でデートを楽しめる場所が少ない!と言うのだ。
「ねえ、真琴、これって不公平じゃないの? 長とつく者は、個室持ってて
そこに相手を引き込めるけど、私たち下っ端は、ルームメートにお願いして
部屋を空けてもらったり、いろいろ面倒でさ。それも一度、二度まではいいけど
何度も続くと、ルームメートととも、微妙な距離が出来ちゃったり。こっちも
気使ってるんだけどさあ。ねえ、なんとかならないのかなあ?」
アイタタタ。
と、これは心の中の台詞ね。
だって、私とサブちゃんの事言われてる!って思っちゃって。
本人に悪気も自覚もないようだったけどね。
うーん。でも、確かにそういう不満を持つ者は一人や二人じゃないんだよね。
サブちゃんに相談してみたけれど
「そんな、あからさまお願いが、このヤマトの中で通るワケないだろっ!」と、にべもない。
はあ~、そうだよね。あからさまなのは、ちょっと、ねえ。
でも、ヤマトは若いクルーが大半を占めているわけで、当初から
(もともとイズモ計画ありきだった側面もあるから)
推進とまではいかなくても、ある程度黙認されてきてるワケなのよね。
そんなこんなで、医務室でも食堂でも同じようなお願いを、私は聞く羽目になっているのでした。
ハ、また未来ちゃんと目が合っちゃったわ。
「真琴さん、例の話、進展してます?」
「ああーー、ゴメン!まだ相談してないの。そのうちになんとか上の人と
掛け合ってみるからね?もうちょっと待ってて」
「そうですか……。私、もう部屋の時間をずらしてもらうの、嫌なんです
北野くんにもそう言ってるのに。彼、もう待てないらしくて、古代さんに
直談判しそうなんですよ。私、それだけは止めてって言ってるんだけど」
「ダメ、ダメダメダメダメーーーッ!!!それだけは
ぜぇーーーーーーったいにダメよっ!!!」
「声が大きいよ!?真琴さん」
未来ちゃんの顔つきが険しくなった。
「や、ごめん。でもそれだけは絶対にダメ!あんな生真面目が
服着て歩いてるような人に相談したら、当然却下されるだろうし
下手すりゃ、交際禁止令でも敷かれるんじゃないかな?」
「わあ、古代さんってそんなに堅物なの? 雪さんとヘラヘラ笑ってデートしてるけど?」
「んー、どうだかなあ。部下の面倒見がいいってのはわかるけど、それとこれとは
別だっていいそうだもん、あのひと」
「真琴さん、ここだけの話よ?」
そういって未来ちゃんは私に耳打ちするのだった。
「昨日、古代さんの部屋から、雪さんが出てきたって、戦術科の人が言ってたの。
彼、口の堅いひとだけどね。ヤバイでしょ? 噂になって、『なんで、古代さんはよくて
僕らは楽しめないんですかー』って暴動が起きますよ?」
「!!!」
口が堅いって、アンタ、そりゃ北野経由でしょ、ってことは
これはもう噂になってると言ってもいいレベル!!
私は、トレイにお味噌汁を乗せたままだということも忘れて、ダンッとテーブルを勢いよく叩いた。
「もはや、一刻の猶予もないわっ! わかった。未来ちゃん、私に任せて!!」
向かう先は、戦術長!じゃあ、なかった。雪さん!!
……。
でもないな。当事者相手だと、色々と話がややこしくなりそうだ。
その時、ふと視線を感じたの。
さっきから、じっとこっちを不思議そうに眺めている女性――新見さん!
「あ、あの、新見さん、ちょっと、お話イイデスカ?」
「あら、珍しい。フフフ。でもいつか来るんじゃないかって思ってたのよ」
ちゃっかりと新見さんの隣にトレイを持って、移動してきた私に、彼女は
「ここじゃ、言いにくいでしょう?医務室で話す?」と提案してくれたので、こっちとしては大助かり。
雪さんのタイプとも違う、ちょっと近寄りがたい雰囲気を持ったこの人は、話しをしてみると
案外情の深い優しい年上の女性だった。
佐渡先生は艦長室だし、今医務室にいる他の衛生士は、私に相談したことのある若い男性だ。
私は、単刀直入に新見さんにお願いしてみることにした。
「これは、私も含め、多数のクルーからのお願いなんです。若いヤマトの恋人たちに
時間と場所を提供することはできないでしょうか?」
「ヤマトの中で、何を浮かれたこと言ってるんだ?と誤解されかねないお願いではあるんですけど……」
私は、できるだけ彼女の情に訴えるよう、あらゆる例を引き合いに出して話してみた。
「若い、に限ったことじゃないけど……」
新見さんの表情が一瞬曇ったように見えた?気のせい??
「あ、別に深い意味はないんです…」
しくじったー!と顔にでちゃったかも知れない私に、別段構うことなく
でもいつもの新見さんらしくなくて。
なんていうか。
彼女は、どこか遠くを見たままで、ポツンと言ったの。
「二人の時間は大事よ。そこがヤマトの中でもどこででもね」
「あの、新見さん?」
「……わかったわ。私が副長に話してみるわ。艦長にもお願いしてもらえるように」
それからなんと三日後には、新見さんから
『例の件、副長、艦長から許可をいただきました。ただし、ルールがあります。
詳細はこちらで決めます。あとでカウンセリングルームまできてください。話を進めましょう』
と返事をいただいたってわけなのです。
こんなにすんなりと事が進むんだったら、もっと早く新見さんに相談すればよかったな。
おかげさまで、未来ちゃんや北野君、他にも散々愚痴ってた人たちからも、感謝されっぱなし。
噂になりつつあった、古代さんと雪さんのコッソリデート話も、今はどうでもよくなっちゃったみたい。
驚いたのが、この「喫茶娯楽室」レンタル開始通知を見て、当の古代さんと
雪さんが申し込みに来ちゃったこと。
あら、あなたたちには必要ないんじゃないかしら~なんて意地悪言う人もなく、それどころか
「あの個室、狭いもんなあ」ってサブちゃんが同情してたりして。
(ダメだよ~~、サブちゃん!!内緒なんだからね!)
もちろん、誰が申し込みにきたか、なんて誰にも言いませんって。
守秘義務は守りますよ。安心して申し込みにきてくださいね!
まあ、とにもかくにも丸く収まりそうで、何よりです♪
******
「原田さん、あの、例の件、お願いします。3日後の二二○○から3時間……」
医務室にいた真琴に近付くなり、小声で捲し立てたのは雪だ。
+++++
~喫茶娯楽室、レンタル開始~
怪しげな通知が艦内に密かに出回っていた。
『なんだ?ヤマトにこんなレクリエーションルームってあったっけ?』
『さあ? それもなんで今頃なのかしら? 古代君も知らなかったの?』
『雪が知らないのに、俺が知ってるわけないだろ。でもなんか怪しくないか?』
『責任者は新見さんだから、ヘンなものじゃなさそうだけど。真田副長もご存じだろうし』
裸の腕が、キャミソール一枚の雪を後ろから抱いていた。古代が、雪の肩に顎を乗せて、手の中のタブレットに表示された
メール文を覗き込んでいた。
『原田君が担当してるのか……』
詳細は医務室の原田真琴衛生士まで。って??
一週間ほど前に古代君の部屋で過ごしていた私たちは、怪しげな通知について噂していた。
それが、早い話が、ヤマト艦内で誕生した恋人同士の為の、”愛の部屋”って事らしい。
やだ、古代君、面白そうって顔してる。
えええ???申込んじゃうの??それって公然と、私たち、そうなんですよーって言ってるようなものじゃない!!
は、恥ずかしい……。
こんなの誰も申込まないよって思ってたのに、なんでも予想外に盛況みたいで、第一回目は抽選になったらしい。
で、締切り直前に申し込んだ私たちは、当然ハズレちゃったわけです。
で、原田さんがこっそりと予約システムのことを教えてくれたので、二回目はスンナリと、すんなりと……。
「は~い、二名様ですねー。ん?まあいっか。OKですよっと。あ、雪さんたちって(このシステムを利用するのは)初めてですか?」
「きゃ~~、な、何言ってるのよ、私とこだ、いえ、え?あの、それって何の回数…??」
「やだなあ。雪さんでもそんなに焦っちゃうんだ。申し込みなんて男に言わせないとダメですよ~」
何も言い返せずに真っ赤になって俯く雪である。
「古代君、忙しくって、ここにこれないって。あの、ここのシステムの事も知らなかったみたいだし。
この前はギリギリに申込んだから、抽選で落ちちゃって。予約システムがあることもその時に知ったのよ」
「混み合ってるんですけど、雪さんたち、前も抽選落ちでしたもんねえ。今回は戦術長権限と船務長権限で
お二人には特別に許可出しちゃいます~~」
グっと親指を立てて、ウィンクを送る原田さんに、頷く私。
「は、ハラダサンっ!!!声が大きいわよ。奥のベッドに入院中の人居るんじゃなかったっけ?」
「大丈夫ですよ、今は誰も居ませんから。佐渡先生は艦長室ですし。初めて利用される雪さんにご利用方法と注意点について
お話しておきますね?えっと、初めてですよね?確か」
「あ、初めて、利用します……」
「あくまで、”喫茶娯楽室”という位置づけでお貸しします。艦長にもそれで許可を頂いたので。でも、まあ暗黙のナントカってやつですけどね。お時間、え、三時間でいいんですか?」
「だって!古代君が忙しい人だから、それでも長い時間なの。原田さん、何ニヤニヤしているの!
変な想像しないで? あなたと加藤さんだって、利用してるんでしょ?お、同じじゃない!!」
「ひどいですよ~、雪さん、私ニヤニヤなんてしてません!にこにこしてるんです」
(ああ、調子狂っちゃうなあ。原田さんのこの笑顔、なんか企んでそう)
「一通り目を通しておいてください。そこに列記されているものが、部屋に備え付けられてあります。
他に必要なものがあったら、事前に登録しておいてください。24時間前までならご用意できると思います」
「は、はあ」
「レンタル時間が終了するまでに、部屋の状態を元に戻しておいてください。不要なもの、ゴミや汚れたものなどは
大きなダストボックスがありますので、分別せずに全部そこに」
「もちろん、プライベートな個人情報は漏えいいたしません。ここで話した内容についてもです。読んでいただけました?
同意される場合は、そこをクリックして。お名前頂けますか?あ、雪さんのだけでいいですよ。古代さんにも同じ内容のお話を
させていただくので、いつでもいいので医務室までお越しください。私に直接おたずねくださいね」
(目の前が暗くなりそうだったけれど、まあいいかも。古代君も、たまにはあたふたすると良いんだわ。)
「あの、じゃあ、そう言うことで、宜しくね」
(申込み完了。あ、仮申し込みね。あとは古代くんにバトンタッチ)
そして笑顔で医務室を後にする。
「はあい。古代さんによろしくです!」
(だから、大きな声で言わないでって、頼むわよ、ホント)
「原田さん、例の申し込み、まだ空きがある?? ええっ?? さっきまで空いてるって話だったのに??
あ、はは~~ん。そっか。まあしゃーないな」
入れ違いに入ってきた戦術科のクルーは、意味ありげに笑うのだった。
2に続きます
帰路のヤマト艦内は比較的平和です。戦闘もないし。
無事にイスカンダルからコスモリバースシステムも受け取って、あとは地球へと急ぐだけ。
でもね。平和すぎると今までどうってことなかったような事柄が、気になってしまうというか。
自分の事だけならともかく、多方面の方々から同じような悩みを聞いてしまった。
医務室で、彼ら(彼女ら)から聞いていた他愛ない愚痴――は、突如怒りの矛先を、
別の方向へと向けてしまい、話を訊く私まで考えさせられてしまった。
彼ら(彼女ら)いわく、上級士官には、個室が与えれていて、そうでない者は相部屋を割り当てられている。
それは、まあそういうもんだと割り切ってるし、文句はない。
だけど!
自分とその恋人が、この艦内でデートを楽しめる場所が少ない!と言うのだ。
「ねえ、真琴、これって不公平じゃないの? 長とつく者は、個室持ってて
そこに相手を引き込めるけど、私たち下っ端は、ルームメートにお願いして
部屋を空けてもらったり、いろいろ面倒でさ。それも一度、二度まではいいけど
何度も続くと、ルームメートととも、微妙な距離が出来ちゃったり。こっちも
気使ってるんだけどさあ。ねえ、なんとかならないのかなあ?」
アイタタタ。
と、これは心の中の台詞ね。
だって、私とサブちゃんの事言われてる!って思っちゃって。
本人に悪気も自覚もないようだったけどね。
うーん。でも、確かにそういう不満を持つ者は一人や二人じゃないんだよね。
サブちゃんに相談してみたけれど
「そんな、あからさまお願いが、このヤマトの中で通るワケないだろっ!」と、にべもない。
はあ~、そうだよね。あからさまなのは、ちょっと、ねえ。
でも、ヤマトは若いクルーが大半を占めているわけで、当初から
(もともとイズモ計画ありきだった側面もあるから)
推進とまではいかなくても、ある程度黙認されてきてるワケなのよね。
そんなこんなで、医務室でも食堂でも同じようなお願いを、私は聞く羽目になっているのでした。
ハ、また未来ちゃんと目が合っちゃったわ。
「真琴さん、例の話、進展してます?」
「ああーー、ゴメン!まだ相談してないの。そのうちになんとか上の人と
掛け合ってみるからね?もうちょっと待ってて」
「そうですか……。私、もう部屋の時間をずらしてもらうの、嫌なんです
北野くんにもそう言ってるのに。彼、もう待てないらしくて、古代さんに
直談判しそうなんですよ。私、それだけは止めてって言ってるんだけど」
「ダメ、ダメダメダメダメーーーッ!!!それだけは
ぜぇーーーーーーったいにダメよっ!!!」
「声が大きいよ!?真琴さん」
未来ちゃんの顔つきが険しくなった。
「や、ごめん。でもそれだけは絶対にダメ!あんな生真面目が
服着て歩いてるような人に相談したら、当然却下されるだろうし
下手すりゃ、交際禁止令でも敷かれるんじゃないかな?」
「わあ、古代さんってそんなに堅物なの? 雪さんとヘラヘラ笑ってデートしてるけど?」
「んー、どうだかなあ。部下の面倒見がいいってのはわかるけど、それとこれとは
別だっていいそうだもん、あのひと」
「真琴さん、ここだけの話よ?」
そういって未来ちゃんは私に耳打ちするのだった。
「昨日、古代さんの部屋から、雪さんが出てきたって、戦術科の人が言ってたの。
彼、口の堅いひとだけどね。ヤバイでしょ? 噂になって、『なんで、古代さんはよくて
僕らは楽しめないんですかー』って暴動が起きますよ?」
「!!!」
口が堅いって、アンタ、そりゃ北野経由でしょ、ってことは
これはもう噂になってると言ってもいいレベル!!
私は、トレイにお味噌汁を乗せたままだということも忘れて、ダンッとテーブルを勢いよく叩いた。
「もはや、一刻の猶予もないわっ! わかった。未来ちゃん、私に任せて!!」
向かう先は、戦術長!じゃあ、なかった。雪さん!!
……。
でもないな。当事者相手だと、色々と話がややこしくなりそうだ。
その時、ふと視線を感じたの。
さっきから、じっとこっちを不思議そうに眺めている女性――新見さん!
「あ、あの、新見さん、ちょっと、お話イイデスカ?」
「あら、珍しい。フフフ。でもいつか来るんじゃないかって思ってたのよ」
ちゃっかりと新見さんの隣にトレイを持って、移動してきた私に、彼女は
「ここじゃ、言いにくいでしょう?医務室で話す?」と提案してくれたので、こっちとしては大助かり。
雪さんのタイプとも違う、ちょっと近寄りがたい雰囲気を持ったこの人は、話しをしてみると
案外情の深い優しい年上の女性だった。
佐渡先生は艦長室だし、今医務室にいる他の衛生士は、私に相談したことのある若い男性だ。
私は、単刀直入に新見さんにお願いしてみることにした。
「これは、私も含め、多数のクルーからのお願いなんです。若いヤマトの恋人たちに
時間と場所を提供することはできないでしょうか?」
「ヤマトの中で、何を浮かれたこと言ってるんだ?と誤解されかねないお願いではあるんですけど……」
私は、できるだけ彼女の情に訴えるよう、あらゆる例を引き合いに出して話してみた。
「若い、に限ったことじゃないけど……」
新見さんの表情が一瞬曇ったように見えた?気のせい??
「あ、別に深い意味はないんです…」
しくじったー!と顔にでちゃったかも知れない私に、別段構うことなく
でもいつもの新見さんらしくなくて。
なんていうか。
彼女は、どこか遠くを見たままで、ポツンと言ったの。
「二人の時間は大事よ。そこがヤマトの中でもどこででもね」
「あの、新見さん?」
「……わかったわ。私が副長に話してみるわ。艦長にもお願いしてもらえるように」
それからなんと三日後には、新見さんから
『例の件、副長、艦長から許可をいただきました。ただし、ルールがあります。
詳細はこちらで決めます。あとでカウンセリングルームまできてください。話を進めましょう』
と返事をいただいたってわけなのです。
こんなにすんなりと事が進むんだったら、もっと早く新見さんに相談すればよかったな。
おかげさまで、未来ちゃんや北野君、他にも散々愚痴ってた人たちからも、感謝されっぱなし。
噂になりつつあった、古代さんと雪さんのコッソリデート話も、今はどうでもよくなっちゃったみたい。
驚いたのが、この「喫茶娯楽室」レンタル開始通知を見て、当の古代さんと
雪さんが申し込みに来ちゃったこと。
あら、あなたたちには必要ないんじゃないかしら~なんて意地悪言う人もなく、それどころか
「あの個室、狭いもんなあ」ってサブちゃんが同情してたりして。
(ダメだよ~~、サブちゃん!!内緒なんだからね!)
もちろん、誰が申し込みにきたか、なんて誰にも言いませんって。
守秘義務は守りますよ。安心して申し込みにきてくださいね!
まあ、とにもかくにも丸く収まりそうで、何よりです♪
******
「原田さん、あの、例の件、お願いします。3日後の二二○○から3時間……」
医務室にいた真琴に近付くなり、小声で捲し立てたのは雪だ。
+++++
~喫茶娯楽室、レンタル開始~
怪しげな通知が艦内に密かに出回っていた。
『なんだ?ヤマトにこんなレクリエーションルームってあったっけ?』
『さあ? それもなんで今頃なのかしら? 古代君も知らなかったの?』
『雪が知らないのに、俺が知ってるわけないだろ。でもなんか怪しくないか?』
『責任者は新見さんだから、ヘンなものじゃなさそうだけど。真田副長もご存じだろうし』
裸の腕が、キャミソール一枚の雪を後ろから抱いていた。古代が、雪の肩に顎を乗せて、手の中のタブレットに表示された
メール文を覗き込んでいた。
『原田君が担当してるのか……』
詳細は医務室の原田真琴衛生士まで。って??
一週間ほど前に古代君の部屋で過ごしていた私たちは、怪しげな通知について噂していた。
それが、早い話が、ヤマト艦内で誕生した恋人同士の為の、”愛の部屋”って事らしい。
やだ、古代君、面白そうって顔してる。
えええ???申込んじゃうの??それって公然と、私たち、そうなんですよーって言ってるようなものじゃない!!
は、恥ずかしい……。
こんなの誰も申込まないよって思ってたのに、なんでも予想外に盛況みたいで、第一回目は抽選になったらしい。
で、締切り直前に申し込んだ私たちは、当然ハズレちゃったわけです。
で、原田さんがこっそりと予約システムのことを教えてくれたので、二回目はスンナリと、すんなりと……。
「は~い、二名様ですねー。ん?まあいっか。OKですよっと。あ、雪さんたちって(このシステムを利用するのは)初めてですか?」
「きゃ~~、な、何言ってるのよ、私とこだ、いえ、え?あの、それって何の回数…??」
「やだなあ。雪さんでもそんなに焦っちゃうんだ。申し込みなんて男に言わせないとダメですよ~」
何も言い返せずに真っ赤になって俯く雪である。
「古代君、忙しくって、ここにこれないって。あの、ここのシステムの事も知らなかったみたいだし。
この前はギリギリに申込んだから、抽選で落ちちゃって。予約システムがあることもその時に知ったのよ」
「混み合ってるんですけど、雪さんたち、前も抽選落ちでしたもんねえ。今回は戦術長権限と船務長権限で
お二人には特別に許可出しちゃいます~~」
グっと親指を立てて、ウィンクを送る原田さんに、頷く私。
「は、ハラダサンっ!!!声が大きいわよ。奥のベッドに入院中の人居るんじゃなかったっけ?」
「大丈夫ですよ、今は誰も居ませんから。佐渡先生は艦長室ですし。初めて利用される雪さんにご利用方法と注意点について
お話しておきますね?えっと、初めてですよね?確か」
「あ、初めて、利用します……」
「あくまで、”喫茶娯楽室”という位置づけでお貸しします。艦長にもそれで許可を頂いたので。でも、まあ暗黙のナントカってやつですけどね。お時間、え、三時間でいいんですか?」
「だって!古代君が忙しい人だから、それでも長い時間なの。原田さん、何ニヤニヤしているの!
変な想像しないで? あなたと加藤さんだって、利用してるんでしょ?お、同じじゃない!!」
「ひどいですよ~、雪さん、私ニヤニヤなんてしてません!にこにこしてるんです」
(ああ、調子狂っちゃうなあ。原田さんのこの笑顔、なんか企んでそう)
「一通り目を通しておいてください。そこに列記されているものが、部屋に備え付けられてあります。
他に必要なものがあったら、事前に登録しておいてください。24時間前までならご用意できると思います」
「は、はあ」
「レンタル時間が終了するまでに、部屋の状態を元に戻しておいてください。不要なもの、ゴミや汚れたものなどは
大きなダストボックスがありますので、分別せずに全部そこに」
「もちろん、プライベートな個人情報は漏えいいたしません。ここで話した内容についてもです。読んでいただけました?
同意される場合は、そこをクリックして。お名前頂けますか?あ、雪さんのだけでいいですよ。古代さんにも同じ内容のお話を
させていただくので、いつでもいいので医務室までお越しください。私に直接おたずねくださいね」
(目の前が暗くなりそうだったけれど、まあいいかも。古代君も、たまにはあたふたすると良いんだわ。)
「あの、じゃあ、そう言うことで、宜しくね」
(申込み完了。あ、仮申し込みね。あとは古代くんにバトンタッチ)
そして笑顔で医務室を後にする。
「はあい。古代さんによろしくです!」
(だから、大きな声で言わないでって、頼むわよ、ホント)
「原田さん、例の申し込み、まだ空きがある?? ええっ?? さっきまで空いてるって話だったのに??
あ、はは~~ん。そっか。まあしゃーないな」
入れ違いに入ってきた戦術科のクルーは、意味ありげに笑うのだった。
2に続きます
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プロフィール

管理人 ひがしのひとみ
ヤマト2199に30数年ぶりにド嵌りしました。ほとんど古代くんと雪のSSです
こちらは宇宙戦艦ヤマト2199のファンサイトです。関係各社さまとは一切関係ございません。扱っているものはすべて個人の妄想による二次作品です。この意味がご理解いただける方のみ、お楽しみください。
また当サイトにある作品は、頂いたものも含めてすべて持ち出し禁止です。
また当サイトにある作品は、頂いたものも含めてすべて持ち出し禁止です。