いつか君と満天の星空を見てみたい。
『僕が寝転んだら、君も隣に寝転がってくれる? 誰の目も気にせずに』
そう訊くと、雪は屈託のない笑顔で「もちろん!」と答えたのだった。






「Here We Go!」(Here With Meその後)

 婚約して数か月。その願いが叶おうとしている。
残念ながら、ハネムーンではない。ついでに残念ながら二人きりの旅行ではない。

 南部経由で旅行の計画がもちあがったのはひと月前。ナンブリゾートが手掛けた
一大リゾート施設がオープンするからと、まずは岬君や雪たちにパンフレットが配られた。
俺や島はそのついでといった感じで「二人もどうだい?」などと誘われたんだ。
『一般オープン前に、無料でご招待するんだ。デラックスなホテルから、キャビン
キャンプ場にビーチ。たいていのものはそこで調達できるモールも隣接している』
この話に、雪たちは目を輝かせ『行きたい! 絶対行こうよ』
とさっさと休みを申請してしまった。
雪が行って、俺が行かないわけにはいかないから、島と平田を誘って俺たちも
休暇を申請、もぎ取ったってわけだ。

メンバーは俺、島、南部、平田、岬君、真琴君、雪という七名が参加するとの事だった。
残念なことに加藤は月基地で演習真っ最中で休みを取れなかったらしく
今回は欠席とのことだった。
真琴君は小さな赤ちゃんを連れてくるので、女子はキャビンを借りることになった。


************

昼間のビーチは賑やかだった。オープンしたばかりの施設は、南部が自慢した通りで
どこもかしこも サービスが行き届いている。
「スイカ割りしたいな」と言えばすぐさまバットとスイカ一個が届けられ
「バナナボートで勝負だ!」と言えば、係員が飛んできた。
航海長チーム、戦術長チームに分かれてそれぞれボートに引っ張られ
思う存分スピードとスリルを楽しんだ。

バナナボートのスピードについて行けず、気分の悪くなった平田は
真琴君の隣、パラソルの下で休憩中だった。
「だらしないなあ。元ヤマトクルーの主計長ともあろう男が
ボートに酔っただなんてさ」
ジュースを取りに来た南部は、派手な帽子のつばをくいっと持ち上げて
顔色の悪い元主計長に苦笑している。
平田は言い返す元気もなく、眠っているようだった。
「真琴君、シートの位置かえようか? 日が差してくるだろ?」
「お願いします。もう少ししたら、私キャビンで一休みさせてもらうね」
「ああ。岬君か森君に頼みなよ」
戻ってきた俺と島も、居合わせた南部の号令で、荷物を運びシートを運んだ。
かげでぐったりと休んでいたはずの平田は、サンサンと日光を浴びることになった。
「平田~~大丈夫か?」
「う、ん。しばらく休ませてくれ」
「そんなこと言ってると、砂に埋めちまうぞ?」
「……」
元主計長が無言なのをいいことに、島がまず初めに穴を掘りはじめた。
俺もすぐ真似をする。
南部は帽子を目深に被りなおし、俺たちに続いた。
「何やってるの?」
岬と雪も到着し真琴君が見守る中、男女5人で平田を埋めることに成功したのだった。

「砂の中、ひんやりしてて気持ちいいみたい。平田さん、すっかり寝ちゃってるね」
「真琴くん、誰かに蹴飛ばされないよう、気を付けてやって」
「了解しました!」
最後に、南部の派手な帽子を平田の顔に被せて完成。
イタズラを終えた俺たち5人は、それぞれまた海に戻って行った。

降り注ぐ日の光、時折吹く潮風が心地よい。
真琴君は、赤ん坊を腕に抱き、ビーチチェアで転寝をしていた。
彼女は、むずがる子どもを抱きなおし、前方の砂山に埋もれている平田を見た。
「平田さんっ!!!逃げて!!!」
母親の大声に、赤ん坊は驚いてわんわん泣きはじめた。
それにも構わずに、真琴君は寝そべっていたチェアから立ち上がり、平田に向かって叫んだ。

「???」
寝ぼけ眼の平田の頭のまわりにフナムシの大群が行進していたのだった。









「ぎゃあああああああああ~~~~~~~!!!」

彼の断末魔が、ビーチ全体に響き渡ったのは言うまでもない。



*****



ビーチといえばバーベキューだと言い放ったのは、沖縄出身の島だ。
バーベキューで、まず男の仕事といえば火を起こすことだった。
あちこちに点在するコンロからは続々と火がともり、いい匂いがしてくる。
「おい、島。隣では肉焼いてるぞ。うちはまだ着かないのか?」
「うるさいな! さっきからずっとやってるよ。この時代になんでわざわざ
こんな原始的な器具使うんだよ? 南部、もっと着火剤貰って来いよ
これだけじゃ全然足りない」
バーバキューは任せろなどと豪語していたはずの島は、いらだって
俺や南部に当たり散らしている。
「料理は隣のホテルからデリバリーするか?」
「それじゃダメだ! キャンプの意味がないじゃないか」
変なところで熱血ぶりを発揮する俺に、島は
「じゃあ、おまえが火を起こせ」とフイゴを手渡した。
「よし。俺に任せろ! 一分で着火させてみせる」と俺は言い放ち
その言葉通り見事に炭火を起こしたのだった。
たったそれだけのことで、女子からはやんやの喝采だった。
「凄い!古代さん! なんでもできちゃうんですね! 雪さんいいな
こんな素敵な人がフィアンセだなんて。羨ましい!」

 改めて雪のフィアンセだと他人に言われると、なんと返事していいか困ってしまう。
『そうです、僕がフィアンセの古代です』
いや、変だろ。そんな返事。でもいつかそれが『フィアンセ』から『夫』になるんだ。
『妻がいつもお世話になってます。夫の古代です』これが正解か。
なんてぼけっと想像していたら、隣の南部が挑発的に身を乗り出してきた。
「準備完了だぜ? そろそろ号令をかけてくれ」
「あ、ああ。もういいよ」
「おーい、火は入ったんだよな? さっさと肉焼かないと日が暮れるぞ!」
離れたキッチンテーブルから、平田のゲキが飛んだ。
ランタンの灯りがないと薄暗くて肉も野菜も判別がきかなくなってきている。

「最上級認定マーク付の松坂牛だぞ。平田、焦がすなよ」
テーブルのセッティングに余念がない南部からの差し入れの肉だ。
「これステーキで食いたいよなあ。小さいブロックに分けるのがもったいない」
「いいお肉よね。こんないいもの調達するの大変だったんじゃないの?南部君」
「いや、それほどでも……(君が喜ぶならこれくらいの事は!)」
やに下がる南部の顔面に、一発見舞ってやりたいところだが
ぐっと我慢して、肉の皿を受け取った。

今ではかなり料理の腕を上げた雪だが、こんなチャンスは滅多にない
とばかりに平田の後をついてまわっていて、少し、いやかなり俺は面白くない。
「森君、古代の好みは聞いてるの? 和食党だけどエスニック料理も
好きなんだよ。知ってた?」
「前に入ったレストランで、やけにスパイスについて詳しく話してくれたの
昔からそうなのかしら?」
「ああ。それはたぶん、俺の受け売り。ひょっとして辛子の名前の
由来について言ってなかった?」
「そうなの。食事中なのに。なんて名前だったかな? ネズミの……」
「それ! やっぱりやっちまったんだな? 古代のやつ。あいつにムードを
求めても無駄なのかもな。お、睨んでるぞ。君を独り占めするなって顔に出てる」
「古代君、あれで案外焼きもちやきなんですよ。アレ? 聞こえてたのかな」
(しっかりと聞こえてるよ)
とは言えない俺は、への字に下がっているであろう口角を上げてみた。

「古代君、そっちで焼いてね」
岬君と雪は、平田に教わりながら、なんとか具材を切り分けたようだった。
大皿に盛られた野菜を手渡された。雪は目尻を下げて笑っている。
それだけで、俺も嬉しくなった。
「うん」
「焼いていくぞー」
元航海長が音頭を取り、網の上に肉や野菜が並べられていく。
すぐに香ばしいいい匂いがしてきた。


皆が一つになって、同じ目標で協力し合っていくのは久しぶりの感覚だった。
あの頃は、文字通り生死を共に戦った戦友だった。今こうやって
コンロを囲んでいるのが信じられない。
隣の雪は、虫に刺されるのが嫌だと言って、虫よけキャンドルを
そばに置いて、肉をほおぼっている。平田に至っては、虫よけスプレーを体中にかけ
その上から長袖のシャツを着こんで、キャンドルの傍から離れようとしなかった。
南部の普段着が、ヤマト乗艦時の印象からは、ほど遠くて驚いた。
岬君は、以前から雪を慕っていて、プライベートでも雪と仲がいい。
真琴君は、加藤のいい嫁さんであり、一人の女の子の母親でもある。
そして雪のよき理解者でもある。俺は彼女に時々説教されながら
それを煙たいと思ったことはなかった。


島は、俺が雪を婚約したのを、とても喜んでくれていた。
次郎君の兄である彼は、俺が兄さんの背中を追いかけていた士官候補生学校時代
からの親友だ。寮で最初に同部屋になった時、「おまえは甘い」と言われて
よく喧嘩したもの。島は俺の「弟気質」について初めはイライラしたらしい。
そんな俺が島を差し置いて婚約だなんて、と怒っていたが、それは彼なりのエールだ。

「戦術長! 肉が! 松坂牛が消し炭だぞ!!」

(やっちまった……)
島の視線が痛かった。




*****

施設のオープンを記念して、海辺で花火が打ち上げられた。
大きな音が響いたと思ったら、途端に夜空が明るく輝いた。俺たちはテントから這い出た。
「お、花火か」
「何年振りだろう? 懐かしいな」
「どうでもいいけど暑いな。風呂いくぞ」
風情を楽しむということを知らないのか。
「女子も呼んで、のんびり花火を見ないのか?」
「おまえは森君といちゃつきたいだけだろうが」
「そうそう。二人でどうぞごゆっくり」
違うぞ、と反論しようとすると、島と平田に「ハイハイ」などと適当にあしらわれてしまった。
彼らは連れ立ってシャワーエリアに向かった。
残された俺と南部は、コンロでくすぶる火種を囲んで座った。
クーラーボックスから南部が二本の缶ビールを取り出した。
プルトップを引き、二人で軽く缶を合わせた。

「乾杯」
「婚約、おめでとう」
「ああ。ありがとう」
一口飲んだ南部がしみじみと言う。
「古代、僕は君が羨ましい」
「?」
「森君は、いい奥さんになるよ」
「うん」
南部は、飲みかけのビールを置き、テントに引っ込んだ。
そして何かを持って戻ってきた。
「それは?」
「バイオリン」
「見ればわかる。何で持ってきたんだ?」
「君たちの婚約を祝して、一曲弾かせてくれ!」
煙が目に染みたのか。 自分の弾くバイオリンに感動しているのか。それとも。
南部は目を瞑り、演奏に没頭していた。

大砲屋を自負する南部の、繊細な一面を見た。
伸びやかな旋律と、時折響く打ち上げ花火の音が不思議にマッチしていた。
キャビンまで音色が届き、雪や岬君が扉から顔だけこちらに向けている。
「南部君! 素敵!」
雪は岬君と拍手をして喜んでいた。
俺は、ポケットに忍ばせていたハーモニカを取りだそうかと思ってやめた。
そして雪たちと一緒に拍手をした。
南部は演奏を終え、俺と雪たちに向かって深々と頭を下げ
「おめでとう!」ともう一度言った。
「ありがとう!南部君!」
雪と岬君は大喝采だ。二人はニコニコ笑いながら、ドアの中に引き上げて行った。

「式の余興は、大砲屋のバイオリンで決まりだ」
「『愛の挨拶』さ。おまえもハーモニカで練習しておけ」
ケースにバイオリンをしまうと、南部は俺に一瞥をくれた。
「なんで知ってるかって顔だな。お前たちのデート現場はあちこちで目撃されてたんだよ」
「そうなのか……」
「はあ。なんでなんだろう?」
「どうかしたか?」(何でお前が項垂れるんだ?)
俺は呆けた顔で南部を見ていたと思う。
俺の質問には答えず、南部はその場で仁王立ちになった。
「俺は目立ってやるぞ! いいか? 新郎よりもだ」
「ああ。お前がバイオリン弾いてくれると、お客さんは喜ぶよ」

南部は眼鏡を取り、レンズについたゴミをふっと吹き飛ばした。
「先にシャワー浴びてくるよ。火は消さないでおいてくれ。あとでまた呑みなおそうぜ」
「わかった。俺は島たちと交代で、後から行くよ」

南部の背中を見送り、俺は花火を見ながらひとりでビールを飲む。
キャンドルの火が消えそうになっている。俺は虫よけのキャンドルの予備がないか
テントの中に戻ってがさがさと探していた。
その間に、雪は一人でビーチカフェへと向かったのだった。


HWG2

イラストby ココママさま


*****


血相を変えて、火の番をしている俺に「古代さん!」と呼びかけたのは岬君だった。
「雪が帰ってこない?」
「すみません。キャビンを出てから30分経ってます。携帯は置いていって連絡が取れません」
「で、行先は?」
「赤ちゃんのミルクを作るためにお水を買いに行ってくれて」
「岬君は部屋に戻ってて」

(くそっ!)
砂に足を取られて思うように進まない。
気持ちだけはトップスピードで、俺は転がるようにしてその店の前にたどり着いたのだった。


昼間はカフェ営業で、夜になるとバーになっている店だった。
俺は、バーカウンターに無理やり座らされている明るいロングヘアの後姿に駆け寄る。
「雪! 岬君から連絡もらって迎えにきたぞ」
「古代君!」
雪は男たちに囲まれていて、帰れないようにガードされていた。
はっきりものを言う雪のことだ。曖昧な態度で誤解されるような真似はしないはず。
男たちは、昼間のビーチでも雪たちに絡んでいた学生風の四人組だった。
酔っぱらっているのか、顔が真っ赤だ。これは面倒なことになりそうだと思った。

男たちは一斉に俺の方を振り返る。
「お姉さんの彼氏? 遅いお出ましですねえ」
「一緒に飲んでただけですよ? こんな美人には滅多にあえないからね」

俺は雪を手招きするが、学生風の一人が、雪の肩を掴んで押しとどめた。
「おい、雪に触るな」
口で言うよりも早く、手が出てしまう。俺は、そいつの手を払って雪をこちらに引き寄せた。
「お兄さん? 乱暴なんじゃないか? 僕たちは楽しく一緒に飲んでただけだぜ?」
「古代君ありがとう。もう行きましょう」
雪は素早く俺の背に回り、小声で俺に告げる。
「雪は嫌がってるだろ? ちゃんと断っていたと思うが?」

雪を背中に、俺は男たち4人と対峙していた。
そのうちの二人は、俺と雪の背に回り、気が付くとぐるりと取り囲まれていた。

素人の酔っぱらい相手とはいえ、雪を連れてこの状況はマズイな……。
店員が「落ち着いてくださいよ。お客さん。けんかはよしてください」
などと言い始めた。
「大丈夫。外に出ますから」
俺はやつらに睨みをきかせたまま店員に答えてやった。
「おもてに出ろ」
痩せた男の合図で、俺たちは店外に出た。
「下がってろ」
雪にそれだけ言うと、飛びかかってきた痩せっぽちの体当たりを避け、素早く鳩尾に一発。
「だめ! 古代君! ねえ、やめて!」
小柄な一人の男が、無理やり雪の手を掴んで引っ張っていこうとしていた。
「触るなって言ってんだろう!!」
完全にスイッチが入ってしまった俺は、頭に血が上った状態で雪奪還の為突っ込んでいった。
加減がわからない。
一人を足蹴にし、砂浜の上にひっくり返し、男の肩を引っ掴んで振り向かせる。
「あん?」
そいつの振り向きざま、力任せにストレートを見舞った。
一発で完全にのびやがった。
尻もちをついていた男が起き上がり、雪の行く手を阻んだ。
「きゃっ!」
雪が上げた悲鳴に顔を上げると、奴らの一人が手にした砂を、俺に投げつけた。
咄嗟に顔をそむけ、両手で防御の姿勢を取ったが、一瞬のうちに隙ができ、
痩せっぽちの拳を避けきれなかった。

ヒュンっ!
「やめて!」
よろめいた俺に、雪は駆け寄ろうとするが、男たちの一人に腕を掴まれている。
俺は低い姿勢のまま、やつらの懐に飛び込んでいった。下手な蹴りは余裕でかわし、
蹴りあげた方の足を持ち上げると、造作もなくひっくり返った。
今度こそ雪の身柄を確保して、彼女の腕を掴んでいたやつも投げ飛ばした。
心得があるのか、そいつは砂の上にうまく受け身を取ったが、頭に血が上っていた俺は
そいつの腕を捩じりあげた。
「いてててててっ! 悪かったよ。謝る」
「お姉さんが、キレイだったから、つい。悪い」
男たちは、声も切れ切れに降伏したのだった。

雪と俺、のびてる他の4人の男に、遠くから見知った姿が呼びかけてきた。
「おーい、古代! 大丈夫か? 加勢しようか?」
「いいよ、もう。終わったから」
砂まみれになった体から砂を払い、男たちに怪我はないかと尋ねていると
ようやく声の主が到着した。
「だいたい遅いんだよ。岬君からエマージェンシーコール届いたの、5分以上前だろ?
艦内でそれじゃ、俺たち沈んでるぞ」
「いい風呂浴びて、ビールでも飲もうかって話になってたのに。お前喧嘩だって?
森君がらみだって言うから、これでも着替えてすっ飛んできたんだぜ?」
なあ?平田。
島は後ろの平田にもそう言って笑っていた。
「戦術長のことだから、ちゃちゃっと相手して終わってるだろうってゆっくり歩いてきた」
と平田は答えている。
昼間のフナムシ事件はすっかり忘れているらしい。
「沖田さんが聞いたら嘆くよなあ」
おとこたちは口々に「センジュツチョウ?」だの「コダイ?」「モリ?」
と言い合って顔を見合わせている。
そして最後の「オキタ」という名前でピンときたようだった。
「あ、もしかして?」
「なんだ? 怪我してるのか?」
笑いかけていた表情を引き締めて、俺は痩せっぽちに顔を向けた。
「ヤマトの古代さんですか? 彼女はたしか森雪さん? 凄い美人だって
噂でしたが本当だったのですね」
男の妙な感心に、俺はきっぱりと言い放った。
「そうだよ。俺は古代。雪は俺の婚約者だ。わかったら、もう二度とこんな真似するな」






*****


ビーチバーの店主から用意してもらったウォッカと水で、傷口を洗い流して絆創膏を貼ってもらう。
「腕のいいナースのところでもう一度診て貰いましょう?」
「いいや。真琴くんは赤ちゃんの世話で大変だろ? こんなのかすり傷だし」
島や平田はにやにやしながら「森君は古代の世話で大変だけど、よろしくな」
と言い、あとから来てわけのわからなさそうな南部の手を引っ張ってテント区画に戻った。

俺は雪と顔を見合わせて笑う。彼女の肩にもたれて、靴を逆さに振って中に入った砂を落とした。
花火は終わっていて、誰も居ない海辺は静かだった。俺たちは並んで砂浜に腰を下ろした。
「氷も貰ってくるわ。腫れるかもしれないでしょ?」
雪は俺の頬を指さした。
「大丈夫だって。本当に。かすっただけだって」
「古代君も油断するんだって、びっくりしちゃった」
「雪を守りたいって、それだけしか頭になかったからな」


俺は、思い切り手足を伸ばして、仰向けに倒れた。
雪は、そんな俺を笑ってみていたが、すぐに同じように隣に寝転んだ。

「シャワー浴びたんじゃなかったっけ? 砂まみれになるぞ?」
「いいの、平気! それより。ほら。見て?」
「うん……」

夜空一面に満天の星が散らばっていた。
「きれい……」
「ああ」
「私たち、銀河を超えてあの向こうに行ったんだよね……」
「そうだな」
「展望室で星を見ようと思ったら、先客がいたわ。あなただった」
雪は横向きになって、クスクス笑っている。
「ポケット」
「え?」
「入ってるんでしょう? ハーモニカ。古代君のハーモニカ聴きたいなあ」
「南部のバイオリンの後だしなあ……」
「私は、古代君のハーモニカが聴きたいの。この星の下で。ね?」
いたずらっ子のように目を輝かせておねだりする雪が愛おしくて、抱き寄せて触れるだけのキスをした。
「では、一曲」




俺は右手で腕枕をして、そして空いた左手一本で演奏し始めた。
雪の為に。それから素晴らしき仲間を想って。


HWG1

イラストby ココママさま

******


Miss DJ編
ハイ♪ こっそりついてきてしまった百合亜です!
真琴さんに『行って来い!』って言われたからなんです。けっして雪さんのストーカーじゃないですからね?
ケンカのシーンはすっ飛ばし(ニコリ)、そのあとのお二人の甘いイチャイチャは、真琴さんに報告しなくっちゃ!!
古代さんがハーモニカで吹いたいたのはコレかな??

『That's What Friends Are For 』
 by Dionne Warwick and Friends 





2014 0608 hitomi higasino


**********

いつも素敵絵で私を楽しませてくださるココママさまに、私からの感謝の気持ちを込めて
「リクエストお受けします」とお伝えしましたら
★ヤマトのクルーが復活した海に遊びにいくお話ですw
★(メンバーは、古代、島、南部、雪、真琴、百合亜は入れてもらえると嬉しいですv)
★そこで、古代くんに思いっきり嫉妬してほしいという(爆)
★雪ちゃんの水着姿にくらくらしてもらったり、雪ちゃんがナンパされちゃったり、
★乱闘シーンがあったり、もうそこはお任せします(爆)最後はお約束のいちゃラブで(爆爆)
★★で古代くん語り!

と仰せつかったので(笑) できる限りぶっこんでみましたv
てんこ盛りになっちゃいました~~。
チョイダシに、にょろにょろさまからも素敵つっこみ(平田氏フナムシ事件w)を頂いたので
これも入れていい~~??と聞くと、面白がってくださって、イラストも入れてくださいました!
南部君の素敵ブラウスやバイオリンはココママさん案です。面白がってるうちにこんなんになりましたー;;
本当は 島君の島人Tシャツでスイカ割とかも入れたかったんですが、割愛させていただきました;;ごめんなさい。。
最後になって、「百合亜、動いてないやん::」と気が付いてので、急遽 Miss DJ編付け足しました(;;こちらはシブにはつけてません)

書いてて楽しかったです。ココママさん、付き合わせてしまってすみません;;ありがとうございました!!

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