「雨の日の出来事 」 mandarina




七夕の夜。

できるなら晴れた夜空で織姫と彦星の逢瀬を願いたい。



新暦の7/7は 日本では生憎梅雨の時期だ。

かつてガミラスの遊星爆弾の攻撃で地球は赤い空に覆われた。

コスモリバースシステムのおかげで青い空を取り戻した。

雲が流れて、雨が降って、時には雷も鳴る。

天候の変化は地球が生きている証拠。



雨音が聞こえてくる。

雪がカーテンの隙間から外の様子を見てつぶやいた。

「雨、降ってきちゃったね。残念。」

「残念?何で?」

今晩出掛ける予定はない。



「今日七夕でしょ?雨 が降ったら天の川が渡れなくて、織姫と彦星が逢えなくなるわ。」

「今の時代なら、ワープで一瞬さ。」

「伝説の話よ。ロマンチックじゃない。」

彼女は顔をしかめた。



「夜空を見上げて伝説に思いを巡らす、なんて今までできなかったんだもの。 楽しみにしてたのになー」

雪の記憶障害はまだ治っていない。

幼いころ経験しただろう伝統行事の記憶を探しているのかもしれない。



「七夕は今年だけじゃないさ。来年か再来年か。 もしかしたらもっと先かもしれないけど、そのうち晴れる日が来る。その時一緒に見よう」

織姫と彦星の心配もいいけど、今日はオレの誕生日だ。

雪の隣に並び、彼女の肩を抱きよせた。



「…ねぇ、今サラッとすごいこと言わなかった?」

「?すごいこと?」

心なしか彼女の頬が少し赤くなってうつむいた。



「『来年か再来年か、もしかしたらもっと先…』って…その時私は一緒にいられるの?」



…あ…!!!… た、確かに…プロポーズっぽいな…

一度出た言葉は取り消せない。

ヤバい。顔が熱い。



「…そ、そりゃ…ずっと一緒にいるって…決めてたけど…その…ダメ…か?」

思わず隣にいた彼女を抱きしめた。

これで顔を見られずにすむ。



オレの背中に雪の腕がまわる。

「嬉しい…古代君の未来の中に私がいた。私もあなたの誕生日を毎年お祝いしたい。」

オレに未来くれたのキミなんだけどな。 「もちろん。喜んで」

彼女を抱きしめる腕に力を込めた。





お題 にょろにょろ
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