「通勤」  まりこ-K



いつもより少し早い地下鉄。



車内はチラホラと立っている人がいる程度だったのに、反対側のドアの前には、
まるで彼女をガードするかのように、ピッタリと寄り添っている彼がいた。

彼の腕の中にすっぽり包まれている彼女はまっすぐに彼だけを見つめ、
楽しそうにささやきあう二人からは間違い なくピンクのオーラ…



そうか、昨日は七夕。

誕生日の夜がどんなに熱かったのか想像できるわね。



それでも「朝っぱらからイチャイチャしてるんじゃねーよ(怒)」という空気が周囲から感じられないのは、
二人の姿がうっとりするくらい綺麗だからかも。

美男美女ってお得。



それにしても…

私がこれだけじーっと見つめているのに、全く気が付かないなんて二人とも軍人失格よ。

それとも早くも平和ボケ…?



とはいえ、婚約中でラブラブな二人に朝から当てられるのもバカバカしいので、私も気づかれないうちに背を向けた。

やっぱり眼が似てるわよね~なんて、あの人の優しい包み込むような瞳を想い出しながら。



降車駅が一緒なだけに、降りる時に二人は私に気が付いた。

彼女の腰を抱いていた彼は、慌ててすこーしだけ離れて、きっちり45度で頭を下げる。

「おはようございます!」

挨拶がシンクロするってどれだけ仲良し?



「おはよう。進クン、地球に戻っていたのね。」

ピクリ…彼女の顔が微妙にひきつる。

「はい、一週間ほど前に。しばらく地上です。」

彼女とイチャイチャしているところを見られたからか、少しはにかんでいる彼。

「良かったわね、森さん。しばらく寂しくないわね。」

「もうっ、新見さんっ!」

からかうような私に頬を染めて抗議しながら否定はしないのね。



幸せそうで良かった。

あなたたち二人が 幸せでいることがあの人の一番の望みだと思うから…



「そうそう、一日遅れだけど、お誕生日おめでとう、進クン」



進クン、と呼ぶたびに超絶綺麗な彼女の顔がピクリと反応するのが楽しくてやめられないわ~

そのくらいのやっかみは許してね♪


004.jpg

お題 yamami

fynch素材はこちらでお借りしました。
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