(22話~23話の隙間)
「アイコトバ」
古代は一人でそこにいた。
二人だけで話す機会は滅多にない。
雪を助けに行きたい。一度失敗してしまったからとはいえそれきりにしておく古代ではないはずだ。
ユリーシャは折をみて古代に雪救出を促すのだが、彼は全く取り合おうとしない。
しかも救出作戦案を古代自ら却下したという信じられない話も漏れ伝わってきて
ユリーシャの不安は大きくなっていた。
そばに行くと、逃げるようになってしまった古代に、ユリーシャは悟られないようにして近づき
思い切って隣に座る。
古代は驚いていたが、諦めたのか自分のトレイを横にずらして場所をあけてやった。
「ユキは親切だった。ユキに『愛』を教えてもらった」
「あー……。君は地球で、雪と仲良くしてたんだな」
ユリーシャは、古代をじっと見る。
「アイシテルの」
「何を言わせたい?」
古代はユリーシャとは目を合わせずに、持っていたコップをカタンと音をさせてテーブルに置く。
「ユキを助けたい」
「俺だって、そう思ってるさ。だけど……君に言ってもわからないだろうけど、できないんだ」
「どうして?私にはわかる。コダイはアイシテル」
「……君に何がわかるって言うんだ」
「やろうとしない。アイシテルのに」
「いい加減にしてくれ」
「コダイ!」
食堂の椅子を乱暴に引き、古代は立ち上がった。トレイを引っ掴むようにして足早に
後ろを振り返りもせず立ち去ってしまった。
「コダイ……」
すユリーシャはその場に立ち尽くす。
「どうしたの?元気ないじゃない?」
「また、おまえはそんな失礼な物言いを!」
トレイにお揃いのマゼランパフェを乗せた
メルダと玲が心配そうに俯いているユリーシャに近づいて声をかけた。
「コダイがなにか?」
むくれ顔の皇女さまは、二人に向き直ると尖らせた口で「キライ!」と一言。
はあ?とメルダと玲は、顔を見合わせる。
「なにを言ったの?忙しい古代さんに付きまとって困らせたんでしょ?」
だいたいの予想をつけて玲がさり気なく尋ねると、予想外の返事が返ってきた。
「アイシテナイノ?」
目を潤ませて二人にそう訴えるユリーシャに、メルダも玲も大慌てになる。
「ま、待ってください、ユリーシャさま。なんとおっしゃったのですか?」
「そうよ、あんたいつの間に抜け駆けしてんのよ!!」
玲の方は若干本音が漏れている。
思わず口走った玲の本音に、メルダは、え?っと目をむいた。
「おまえ、ユリーシャさまに向かって失礼だぞ!!」
「いいえ、言わせてもらう」
怒りの矛先を正すように、小さく息を吐いてから、玲は再びユリーシャに訴えた。
「ユリーシャ、あんた古代さんが今どんなに辛い立場なのかわかって言ってるの?」
「ツライ?」
「そう。雪さんが連れ去られて、何もできないでいることの辛さが、あんたにわかるの?」
「何もできないのは、なにもしないから。アイシテナイノ」
はあーっと大げさにため息をつくと、玲は切れ長の瞳を釣り上げ、指差しながらユリーシャに食って掛かった。
「言わなきゃアイシテナイってわけじゃないのよ。愛してても何もできない辛さはあなたにはわからない」
「ユリーシャさま、コダイが言ったのですか?アイシテナイと」
「コダイは言わない。何もいわない」
ユリーシャは、一旦目を伏せた。そして、キっと前を向き、顔を上げてこういった。
「私にはわかる。コダイはユキをアイシテル。だから助けたい。ユキもコダイも」
「とにかく。今すぐ助けに行くのは無理でしょう?コダイが『行かない』と言っているなら尚更です」
「時がくれば必ず、古代さんなら立ち上がるはず。出来ることなら私も役に立ちたいと思ってる。だからそれまで大人しくしてて」
メルダは無言で、玲の手を取って固く握り、二度三度と頷いた。
「アキラ、メルダ……」
「雪さんなら、きっと大丈夫。あの人タフだから」
おまえが言うほどだから、きっとタフな女性なんだろうな、とメルダも笑い、ユリーシャも釣られて笑顔に戻った。
「お腹が減ったから、私もパフェもらってくる」
怒ったり、泣いたり、笑ったりして、ユリーシャは百面相をして疲れたと言う。
その後はいつもの天然皇女さまに戻り、嬉しそうにトレイにパフェを乗せていた。
*****
<<蛇足>>
ユリーシャが席を立つと、メルダは気になっていたことを玲に言いにくそうに訊ねる。
「……ところで、アキラ。さっきの話は本当か?」
「ん?何の話だっけ?」
「コダイには好きな女性が居るとか、なんとか」
と、今更な話。
「気になるの? あ、ひょっとして惚れてた??」
「馬鹿、そうではない。あの男は異星人の私ともわかりあえると言い切った初めての男だからな……」
「初めてのオ・ト・コ、ねえ?意味深だ」
「馬鹿にするな!私は、コダイをそんな風には……」
「まあまあ、いいじゃないの。パフェじゃ酔えないけど。失恋確定したもの同士で、今日はぱあ~~~っと行こう!」
「勝手に決めつけるな!!ってなんだ?おまえこそ可愛いところがあったのだな」
きょとんとするユリーシャの前で、二人はパフェグラスで乾杯するのだった。
「アイコトバ」
古代は一人でそこにいた。
二人だけで話す機会は滅多にない。
雪を助けに行きたい。一度失敗してしまったからとはいえそれきりにしておく古代ではないはずだ。
ユリーシャは折をみて古代に雪救出を促すのだが、彼は全く取り合おうとしない。
しかも救出作戦案を古代自ら却下したという信じられない話も漏れ伝わってきて
ユリーシャの不安は大きくなっていた。
そばに行くと、逃げるようになってしまった古代に、ユリーシャは悟られないようにして近づき
思い切って隣に座る。
古代は驚いていたが、諦めたのか自分のトレイを横にずらして場所をあけてやった。
「ユキは親切だった。ユキに『愛』を教えてもらった」
「あー……。君は地球で、雪と仲良くしてたんだな」
ユリーシャは、古代をじっと見る。
「アイシテルの」
「何を言わせたい?」
古代はユリーシャとは目を合わせずに、持っていたコップをカタンと音をさせてテーブルに置く。
「ユキを助けたい」
「俺だって、そう思ってるさ。だけど……君に言ってもわからないだろうけど、できないんだ」
「どうして?私にはわかる。コダイはアイシテル」
「……君に何がわかるって言うんだ」
「やろうとしない。アイシテルのに」
「いい加減にしてくれ」
「コダイ!」
食堂の椅子を乱暴に引き、古代は立ち上がった。トレイを引っ掴むようにして足早に
後ろを振り返りもせず立ち去ってしまった。
「コダイ……」
すユリーシャはその場に立ち尽くす。
「どうしたの?元気ないじゃない?」
「また、おまえはそんな失礼な物言いを!」
トレイにお揃いのマゼランパフェを乗せた
メルダと玲が心配そうに俯いているユリーシャに近づいて声をかけた。
「コダイがなにか?」
むくれ顔の皇女さまは、二人に向き直ると尖らせた口で「キライ!」と一言。
はあ?とメルダと玲は、顔を見合わせる。
「なにを言ったの?忙しい古代さんに付きまとって困らせたんでしょ?」
だいたいの予想をつけて玲がさり気なく尋ねると、予想外の返事が返ってきた。
「アイシテナイノ?」
目を潤ませて二人にそう訴えるユリーシャに、メルダも玲も大慌てになる。
「ま、待ってください、ユリーシャさま。なんとおっしゃったのですか?」
「そうよ、あんたいつの間に抜け駆けしてんのよ!!」
玲の方は若干本音が漏れている。
思わず口走った玲の本音に、メルダは、え?っと目をむいた。
「おまえ、ユリーシャさまに向かって失礼だぞ!!」
「いいえ、言わせてもらう」
怒りの矛先を正すように、小さく息を吐いてから、玲は再びユリーシャに訴えた。
「ユリーシャ、あんた古代さんが今どんなに辛い立場なのかわかって言ってるの?」
「ツライ?」
「そう。雪さんが連れ去られて、何もできないでいることの辛さが、あんたにわかるの?」
「何もできないのは、なにもしないから。アイシテナイノ」
はあーっと大げさにため息をつくと、玲は切れ長の瞳を釣り上げ、指差しながらユリーシャに食って掛かった。
「言わなきゃアイシテナイってわけじゃないのよ。愛してても何もできない辛さはあなたにはわからない」
「ユリーシャさま、コダイが言ったのですか?アイシテナイと」
「コダイは言わない。何もいわない」
ユリーシャは、一旦目を伏せた。そして、キっと前を向き、顔を上げてこういった。
「私にはわかる。コダイはユキをアイシテル。だから助けたい。ユキもコダイも」
「とにかく。今すぐ助けに行くのは無理でしょう?コダイが『行かない』と言っているなら尚更です」
「時がくれば必ず、古代さんなら立ち上がるはず。出来ることなら私も役に立ちたいと思ってる。だからそれまで大人しくしてて」
メルダは無言で、玲の手を取って固く握り、二度三度と頷いた。
「アキラ、メルダ……」
「雪さんなら、きっと大丈夫。あの人タフだから」
おまえが言うほどだから、きっとタフな女性なんだろうな、とメルダも笑い、ユリーシャも釣られて笑顔に戻った。
「お腹が減ったから、私もパフェもらってくる」
怒ったり、泣いたり、笑ったりして、ユリーシャは百面相をして疲れたと言う。
その後はいつもの天然皇女さまに戻り、嬉しそうにトレイにパフェを乗せていた。
*****
<<蛇足>>
ユリーシャが席を立つと、メルダは気になっていたことを玲に言いにくそうに訊ねる。
「……ところで、アキラ。さっきの話は本当か?」
「ん?何の話だっけ?」
「コダイには好きな女性が居るとか、なんとか」
と、今更な話。
「気になるの? あ、ひょっとして惚れてた??」
「馬鹿、そうではない。あの男は異星人の私ともわかりあえると言い切った初めての男だからな……」
「初めてのオ・ト・コ、ねえ?意味深だ」
「馬鹿にするな!私は、コダイをそんな風には……」
「まあまあ、いいじゃないの。パフェじゃ酔えないけど。失恋確定したもの同士で、今日はぱあ~~~っと行こう!」
「勝手に決めつけるな!!ってなんだ?おまえこそ可愛いところがあったのだな」
きょとんとするユリーシャの前で、二人はパフェグラスで乾杯するのだった。
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プロフィール

管理人 ひがしのひとみ
ヤマト2199に30数年ぶりにド嵌りしました。ほとんど古代くんと雪のSSです
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