そこは地下都市の一角。地球防衛軍司令部勤務の森が、ボランティアで引き受けた
オープンスクールでのイベントだった。
子どもたちに真実を。そして生きるための明るい希望を。
その願いを込めた『七夕祭り』が開催されていた。
子ども達が思い思いの短冊かざりを笹に飾り付けていく。
その中には島大介の弟、次郎の姿もあった。
次郎の願いは『いつかまた大介兄ちゃんと、青空の下でサッカーをすること』
短冊に、そう記してなるべく笹の高い場所にこよりでくくりつけたい、と手を伸ばした。
「次郎!」
弟の手から短冊を取り、にっこり笑ったのは大介だった。
「兄ちゃん! 来てたの?」
「ああ。訓練は昨日で終わったからな。さっきこっちに戻ってきたところ。母さんに
お前の迎えを頼まれた」
「やったー!兄ちゃん帰ってきたんだ!あ、古代の兄ちゃんもお帰りなさい」
兄の後ろのいるのは大介の親友の古代だった。
「次郎君、ただいま! 願い事、何書いたの?」
「うん。これ」
といって差し出したのはサッカーを兄としたいという微笑ましいものだった。
「島のところは兄弟の仲いいのな」
「自慢の弟だよ。 っておまえんちの兄さんも、まわりに言いふらしてるらしいけど?」
おまえがそれを言うか? とでも言いたそうに、島は古代を振り返って笑った。
「ちょ、次郎クン、こっちの願い事は何?」
笹に括りつけられた、次郎の”もう一つのお願いごと”を見つけた古代が、
それを島に指さしてみせた。
「ん?なんだ?」
島もその短冊を覗き込む。
「雪おねえちゃんと結婚できますように」
あきらかに次郎の字で、そう書いてある。
「おい、だれだよ?この子」
「ち、ちがう! 大きな声で言わないでよ!恥ずかしいじゃないか!」
次郎は急に狼狽えだした。
「ははーん。この教室にいる子か?どんな子? かわいいの?」
島も面白がって、そのお姉さんとやらを探し出した。
二人の微笑ましいやり取りを後ろで見ていた古代だったが、その短冊の内容に
どこか思い当たる節があって、それがなんだったのかを必死に思い出そうとしていた。
(子どもの頃、こうやってどこかで短冊を書いたんだ。確か。なんて書いたっけ?)
「残念!雪おねえちゃんは、早めに帰っちゃったんだ。代わりに増村のおばさんが来てるよ」
話をきいていたのか、次郎の友達が一人、二人とやってきて”雪はもういない”ことを
大介と古代に告げたのだった。
「そうかー。残念だったなあ。次郎の初恋の女の子に会ってみたかったなあ」
「そんなんじゃないって! 雪おねえちゃんは、雪おねえちゃんは……」
真っ赤になって俯いてしまった次郎の肩を、古代がぽんと叩いた。
「次郎君の願い、叶うといいな。叶えてみせろよ?」
「う、うん……」
少なくとも雪おねえちゃんとの結婚は無理だろうなあ。なんとなくそう思う次郎だった。
その頃。
「ハックシュン!」
司令部に戻るエスカレーターに乗り、二度もくしゃみを繰り返した雪は。
「どうしたの? 風邪ひいた?」
「いいえ。大丈夫」
「誰か噂しているんじゃないかな? 森君、人気あるから」
眼鏡をくいっと上げて隣の雪をそう評した南部の方が、なぜか得意げで嬉しそうだった。
2014 0525 hitomi higasino
オープンスクールでのイベントだった。
子どもたちに真実を。そして生きるための明るい希望を。
その願いを込めた『七夕祭り』が開催されていた。
子ども達が思い思いの短冊かざりを笹に飾り付けていく。
その中には島大介の弟、次郎の姿もあった。
次郎の願いは『いつかまた大介兄ちゃんと、青空の下でサッカーをすること』
短冊に、そう記してなるべく笹の高い場所にこよりでくくりつけたい、と手を伸ばした。
「次郎!」
弟の手から短冊を取り、にっこり笑ったのは大介だった。
「兄ちゃん! 来てたの?」
「ああ。訓練は昨日で終わったからな。さっきこっちに戻ってきたところ。母さんに
お前の迎えを頼まれた」
「やったー!兄ちゃん帰ってきたんだ!あ、古代の兄ちゃんもお帰りなさい」
兄の後ろのいるのは大介の親友の古代だった。
「次郎君、ただいま! 願い事、何書いたの?」
「うん。これ」
といって差し出したのはサッカーを兄としたいという微笑ましいものだった。
「島のところは兄弟の仲いいのな」
「自慢の弟だよ。 っておまえんちの兄さんも、まわりに言いふらしてるらしいけど?」
おまえがそれを言うか? とでも言いたそうに、島は古代を振り返って笑った。
「ちょ、次郎クン、こっちの願い事は何?」
笹に括りつけられた、次郎の”もう一つのお願いごと”を見つけた古代が、
それを島に指さしてみせた。
「ん?なんだ?」
島もその短冊を覗き込む。
「雪おねえちゃんと結婚できますように」
あきらかに次郎の字で、そう書いてある。
「おい、だれだよ?この子」
「ち、ちがう! 大きな声で言わないでよ!恥ずかしいじゃないか!」
次郎は急に狼狽えだした。
「ははーん。この教室にいる子か?どんな子? かわいいの?」
島も面白がって、そのお姉さんとやらを探し出した。
二人の微笑ましいやり取りを後ろで見ていた古代だったが、その短冊の内容に
どこか思い当たる節があって、それがなんだったのかを必死に思い出そうとしていた。
(子どもの頃、こうやってどこかで短冊を書いたんだ。確か。なんて書いたっけ?)
「残念!雪おねえちゃんは、早めに帰っちゃったんだ。代わりに増村のおばさんが来てるよ」
話をきいていたのか、次郎の友達が一人、二人とやってきて”雪はもういない”ことを
大介と古代に告げたのだった。
「そうかー。残念だったなあ。次郎の初恋の女の子に会ってみたかったなあ」
「そんなんじゃないって! 雪おねえちゃんは、雪おねえちゃんは……」
真っ赤になって俯いてしまった次郎の肩を、古代がぽんと叩いた。
「次郎君の願い、叶うといいな。叶えてみせろよ?」
「う、うん……」
少なくとも雪おねえちゃんとの結婚は無理だろうなあ。なんとなくそう思う次郎だった。
その頃。
「ハックシュン!」
司令部に戻るエスカレーターに乗り、二度もくしゃみを繰り返した雪は。
「どうしたの? 風邪ひいた?」
「いいえ。大丈夫」
「誰か噂しているんじゃないかな? 森君、人気あるから」
眼鏡をくいっと上げて隣の雪をそう評した南部の方が、なぜか得意げで嬉しそうだった。
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プロフィール

管理人 ひがしのひとみ
ヤマト2199に30数年ぶりにド嵌りしました。ほとんど古代くんと雪のSSです
こちらは宇宙戦艦ヤマト2199のファンサイトです。関係各社さまとは一切関係ございません。扱っているものはすべて個人の妄想による二次作品です。この意味がご理解いただける方のみ、お楽しみください。
また当サイトにある作品は、頂いたものも含めてすべて持ち出し禁止です。
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